登録後の維持費用
出願をし、無事審査を通過した場合(実用新案は無審査)、登録に必要なお金(特許料/登録料)を特許庁に納付しなければなりません。さらに、権利を維持するためには、登録後も決められた額を納め続ける必要があります。この権利維持のための費用のことを、業界では「年金」と言っています(「年金」と聞くとお金をもらえそうなイメージがありますが、残念ながら払うものです。とても紛らわしいのでもっと良いネーミングに変えてほしいです…)。今回は、特許、実用新案、意匠、商標それぞれの法域において、登録後にかかるお金についてご説明したいと思います。
なお、今回は全体的なイメージをお伝えするために具体的な金額の記載は省略しました。金額の詳細な計算方法は特許庁産業財産権関係料金一覧の「4.特許料・登録料」をご覧ください。
特許
特許権の存続期間は、出願~20年(医薬品特許等で特定の要件を満たす場合は最長25年)です。この20年のうち、特許になって以降の権利維持に毎年年金の納付が必要になります。
ただし、特許権を登録するためには特許料として第1~3年度分の年金をあらかじめ納付する必要がありますので、毎年の年金納付は第4年度以降となります。
特許の年金は、第4年度、第7年度、第10年度に増加します。 特に第7年度、第10年度の値上がり額は大きいですので、これらのタイミングで権利維持要否を見直すことが多いです。
実用新案
実用新案権の存続期間は、出願~10年です。実用新案の場合は、出願と同時に第1~3年度分の年金(登録料)を納付します。
実用新案の年金は、第4年度、第7年度に増加します。特に7年度では上り幅が大きく、存続期間満了まであと3年ですので、7年度以降は納付せず権利を放棄する、というケースもあります。
意匠
意匠権の存続期間は、出願~25年です。意匠の場合は、登録時に第1年度分の年金(登録料)を納付します。
意匠の年金は、第4年度に増加し、以降最終年度まで一定です。
商標
商標権の存続期間は、登録~10年です(何回でも更新できます)。商標は他の法域と異なり、毎年の年金はありません。その代わり、登録時と更新時に10年分(5年ずつの分割納付も可能ですが、割高になります)の権利維持費用(登録料/更新料)を納める必要があります。
更新料は、更新回数に関わらず一定です。
まとめ
以上のように、一旦権利化された後も、それを維持するためにはお金がかかります。上でご紹介したのはあくまでも特許庁に納付するお金(印紙代)のみであり、特許事務所を通じて手続きをした場合には特許事務所に対する手数料も発生します。年金は複数年度分をまとめて納めることも可能ですので、できるだけコストを抑えつつ権利を有効に活用するためには、納付年度や残権利期間、今後の事業の方向性等を総合的に考慮し、都度見直しをかけることが重要です。