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2022.07.01

商品・サービスの類否判断

商標を登録すると、以下の範囲では、他人は商標を使用できませんし、商標を登録することもできません。

  • 商標が同一又は類似の範囲
  • 商品・サービスが同一又は類似の範囲

※詳細は、こちらのコラムにおける「商標権の効力が及ぶ範囲」をご参照ください。

そうなると、「商標が類似するか否か」と「商品・サービスが類似するか否か」をどう判断するか、がポイントとなります。「商標が類似するか否か」の判断手法については、こちらのコラムで既に説明しましたので、今回は「商品・サービスが類似するか否か」の判断手法について説明したいと思います。

画一的な判断手法(主に特許庁の審査における判断手法)

特許庁では、互いに類似すると推定される商品・サービスをグルーピングし、各グループに類似群コードを付した類似商品・役務審査基準を作成しています。そして、特許庁の審査においては、原則として、同じ類似群コードが付された商品・サービスは類似と判断することにしています。

例えば、第32類(アルコールを含有しない飲料及びビール)と第33類(ビールを除くアルコール飲料)の商品は、以下のように、それぞれ4つにグルーピングされて類似群コードが割り振られています。

この例で言うと、第32類のビール(類似群コード:28A02)は、同じ類似群コードが付されている第33類の酎ハイ(類似群コード:28A02)とは類似すると判断され、同じ区分(類)でも異なる類似群コードが付されている第32類の清涼飲料(類似群コード:29C01)や、同じお酒でも異なる類似群コードが付されている第33類の焼酎(類似群コード:28A01)とは類似しないと判断されます。

この判断手法によれば、誰でも同じ結論を導き出すことができますが、商品・サービスの個別具体的な事情が全く考慮されない、というデメリットもあります。なお、特許庁は、この類似群コードによる商品・サービスの類否は「推定」に過ぎず、次の項で示すような個別具体的な事情を考慮して、逆の判断になる可能性もあるとしています。

個別具体的な判断手法(主に裁判所の審理における判断手法)

商品の類否に関しては、だいぶ昔になりますが、最高裁判所が以下のような考え方を判示しており、現在においても、裁判所の審理における商品・サービスの類否の判断基準として採用されています。

最高裁判所第三小法廷 昭和36年6月27日 昭和33(オ)1104 橘正宗事件 より 
商品が類似のものであるかどうかは、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にあるかにより判断する。

要するに、もし商品Aに商品Bと同一の商標を付して販売したとしたら同じ会社の商品だと勘違いしてしまう場合に、商品Aは商品Bと類似すると判断します。そして、その勘違いのしやすさ(類似するか否か)に関しては、以下のような事情を考慮しつつ、個別具体的に判断することになります。

商品 vs 商品 の場合

  • 商品の生産部門が一致するかどうか
  • 商品の販売部門が一致するかどうか
  • 商品の原材料及び品質が一致するかどうか
  • 商品の用途が一致するかどうか
  • 需要者の範囲が一致するかどうか
  • 完成品と部品との関係にあるかどうか

サービス vs サービス の場合

  • サービスの提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか
  • サービスの提供に関連する物品が一致するかどうか
  • 需要者の範囲が一致するかどうか
  • 業種が同じかどうか
  • 当該サービスに関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうか
  • 同一の事業者が提供するものであるかどうか

商品 vs サービス の場合

  • 商品の製造・販売とサービスの提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか
  • 商品とサービスの用途が一致するかどうか
  • 商品の販売場所とサービスの提供場所が一致するかどうか
  • 需要者の範囲が一致するかどうか