デザイン経営のススメ
「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用することで、企業の産業競争力を向上させる経営手法を言います(下記の図は、特許庁ウェブサイトより引用)。
言葉で表現すると難しくなりますが、その本質は、常にユーザーを中心に考えることで、市場のニーズを的確に捉え、また根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない実現可能な解決策を柔軟に生み出すことにあります。それには、デザインの力が欠かせないのです。
デザイン経営の実践事例
アップル
アップルは、1990年代から、iMac、iPod、iPad、iPhoneなど数々のヒット商品を世に出し、いまや時価総額世界トップの企業に成長しました。
アップルの製品に共通しているのは、秀逸な外観デザインです。これ以上削る要素がないくらいシンプルですが、重要な機能を発揮する部分はしっかりと主張するデザインに仕上げることで、ユーザーは迷いがなくなり安心感を感じるようになります。
また、製品とユーザーの接点にも拘っており、画面に表示されるグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)や、製品を収納する箱のデザインにも力を入れていますし、店舗(アップルストア)も非常にデザイン性の高い内装になっています。ユーザー視点で細部まで拘ってデザインしているからこそ、世界中の人たちがアップルの製品を好んで購入するのです。
まさに、デザインの力でユーザーのニーズを捉え、革命(イノベーション)を引き起こしている企業と言えます。
ダイソン
家電量販店の掃除機売り場をイメージしてください(扇風機・ファンヒーター売り場でも同じです)。
似たようなデザインの掃除機がズラリと並んでいて、どの掃除機がどのメーカーのものかを見分けるのは難しいと思います。でも、ダイソンの掃除機だけは、他とは明らかに違う特徴的なデザインになっていて、遠くからでも一目で分かります。まさに、掃除機のデザインをブランド化して消費者の心を掴み、掃除機自体の価値を高めることに成功した事例と言えます。
ダイソンといえば、『吸引力の変わらないただひとつの掃除機』というキャッチコピーでお馴染みですが、それを実現した技術力のみならず、デザインの力により競争力を獲得した企業であることに間違いありません。
日本企業におけるデザイン経営
世界の有力企業は、デザインの重要性をいち早く認識し、企業戦略の中心にデザインを据え、製品の競争力を高めています。しかし、日本ではまだデザインが有効な経営手段と認識されていない現状があり、グローバルな競争をする上で弱みになっています。
そのような状況を打破すべく、特許庁は、「産業競争力とデザインを考える研究会」を立ち上げて議論し、2018年には報告書『「デザイン経営」宣言』を取りまとめ、「デザイン経営」を積極的に推奨しています。また、中小企業向けには、デザイン経営を分かりやすく解説した『中小企業のためのデザイン経営ハンドブック』という冊子も発行されています。グラフィックユーザーインターフェイス(GUI)の画像や店舗の内装などのデザインも意匠法で保護できるよう、法改正がなされました。
ようやく、日本企業が「デザイン経営」を実践する環境が整ってきたと言えます。
換言すれば、まさに今、中小企業を含めた日本企業が「デザイン経営」を学び、取り組むべき時期なのです。
どのように「デザイン経営」を実践すればよいか、その具体的な手法につきましては、上記の報告書や冊子をお読み頂きたいと思いますが、ひので総合特許事務所では、デザインを守りながら価値を生み出す専門家として、「デザイン経営」に取り組む企業に積極的に関わり、しっかり支援をしていきます。